サムライ伝 最新情報
13.08.20『作家メシ ~浅倉卓弥編~』 1. スティック・セニョール

『サムライ伝 ダダイ編』の連載もいよいよ後半に突入!
本編のラストスパートに合わせて、facebook新企画がスタートします!
『サムライ伝』の著者、浅倉卓弥さんに書き下ろしていただきました、題して『作家メシ ~浅倉卓弥編~』
浅倉さんが愛でる食材とレシピをご紹介していただいています。
このレシピは、きっと真似したくなるはず…。挑戦された方、ぜひ、ご感想をお寄せくださいませ~。
1回目は「スティックセニョール」です。
 
『作家メシ ~浅倉卓弥編~』
1.
スティック・セニョール
 
不惑を過ぎて、気がつけばさらにもう五年以上もの月日が経過している。次の大台もいつのまにすぐ目の前である。どうやら知命というらしいのだが、いずれにせよもう二十代三十代とはずいぶんと違うものだなと我ながら改めて感じるのは、野菜の味にずいぶんと敏感になったことである。実際若い頃はほとんど意識しなかった感覚である。我知らず極力新鮮で美味しそうなものを選ぶようになっているし、何よりも変わったものにお目にかかるとひどく喜ばしく感じる。
野菜の種類に現在見られるようなヴァリエーションが生まれたのは、中世はベルギー辺りのキリスト教の修道院での出来事なのだそうである。彼らが日々額に汗しながらあくなき品種改良を重ねた結果、おそらくはレタスやカリフラワーや、あるいはパプリカ辺りの原型が生まれたのではないかとも想像される。ひょっとして映画『薔薇の名前』でのショーン・コネリーの役どころであった人物も、あるいは日常的にはそんな業務にも従事していたのかもしれないな、などと考えると、なんだかひどく不思議な気持ちになってきさえしてしまう。
そういう訳で、という訳でもないのだけれど、時折鎌倉まで足を伸ばして野菜を物色してくることがある。すでに鎌倉野菜という呼称はブランド名にもなりつつあるけれど、何より産地直送だし、一風変わったものが手に入ることも多いのである。
ここで春先に出回ってくるのが、このスティック・セニョールなる代物である。決して細身のスペイン人男性を示すスラングではなく、ブロッコリーの一種である。もっとも形状はどちらかといえばアスパラガスによく似ている。アスパラの一本ずつにあのブロッコリーの先端部分がついていると思っていただくとわかりやすいかもしれない。もっとも房の部分の密度はもう少し緩い。どちらかといえば菜の花に近い。
このスティック・セニョールを軽く二分ほど下茹でし、それからバターを敷いたフライパンで弱火のままゆっくりと時間をかけて火を通す。穂先にやや焦げ目ができるくらいが食べ頃である。火を止めて軽く塩をまぶせばそれでもう完成する。もし多少の手間を惜しまないのであれば、茎だけの部分は茹でる時間をやや長めにすることをお勧めしておく。香ばしさと苦味と、それから茎野菜特有青臭い甘さが渾然となって楽しめる一品に仕上がるはずである。

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